「ちょっと診て」は困る
居酒屋やスナックで初対面の人によくこんなことを言われます。
「実は肩が痛くてさ、ちょっと見てよ」「腰がギクッてなってて、今ちょっと触ってもらえない?」
──正直、これが一番困ります。
もちろん、体の悩みを相談してもらえること自体はありがたいことですし、信頼の証だとも思います。ただ、問題なのは「その場で施術を求められる」こと。飲酒の場だったり、衛生的な環境が整っていないところで身体を診るのは、専門職としてのリスクが大きすぎます。
私はこう答えるようにしています。
「飲酒後の施術は、飲酒運転と同じくらい危険ですから対応できません」
「きちんと検査して診る必要があるので、ぜひ来院してください」
ときには「お酒の場で体に触るのはセクハラにもなるご時世なので」と冗談交じりにやんわり断ることもあります。
こういった場面、実は「ハラスメント」に該当することもあります。明確な名称こそまだ定着していませんが、「職業ハラスメント」として認識され始めています。
「プロなんだから、ちょっとぐらい見てくれてもいいじゃない」
こういった発言は、相手の専門性を軽視している無意識の圧力。善意を前提とした無償の要求は、決して軽いものではありません。
整骨院の施術は、問診・検査・触診など、プロセスを踏んでこそ本来の効果を発揮します。だからこそ「ちょっと」や「その場で」は対応しないのがプロとしての責任でもあります。
もちろん、体の不調に悩んでいる方がいれば、いつでも真剣に対応したいと思っています。でもそれは、整った環境の中で、きちんとした形で向き合うからこそ意味があるのです。
整骨院の院長として、そして一人の施術家として、
“場を選ばない無償の施術依頼”には、やんわりと、でもしっかりと線を引いていくことが、これからの時代には必要だと強く感じています。